2020-07-09 春 かわいらしい郊外電車の沿線には楽しげに白い家々があつた散歩を誘う小径があつた 降りもしない 乗りもしない畠の中の駅かわいらしい郊外電車の沿線にはしかし養老院の煙突もみえた 雲の多い三月の空の下電車は速力をおとす一瞬の運命論を僕は梅の匂いにおきかえた かわいらしい郊外電車の沿線では春以外は立入禁止である 谷川俊太郎『二十億光年の孤独』より